弁護士法人とかち平野
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憲法は誰のためにあるか

,憲法を知る意味
  憲法が誰のために,また何のためにあるかをご存じですか。私も大学で憲法を学ぶまで知りませんでした。私自身,憲法や法律に格別の関心があって法学部を目指したわけではありません。ただ,漠然と弁護士がかっこいいなあと憧れ,弁護士になるためには法学部に入らなければならないと考えていたに過ぎませんでした。
 私が,社会の出来事に関心を持つようになったのは,大学2年生で憲法を学ぶようになってからです。憲法の理想とすることが,いかに政治において無視ないし軽視されているかを学ぶなかで,いわゆるノンポリ(政治的なことに無関心なこと)学生が変っていったのです。

,憲法は誰のためにあるか
 近代憲法のルーツはアメリカ独立宣言(1776年)とフランス人権宣言(1789年)です。ここでは基本的人権が「人間であることにより当然に有する権利であること」(天賦人権思想)が規定されています。すなわち,近代憲法の存在理由は,天賦の人権を王や国家が侵害してはならないということ,すなわち,国民が国家から自由であること(自由主義)を高らかに宣言しているものなのです。
 自民党などで憲法に盛り込もうとしている国民の義務や倫理,愛国心などといった国民を支配するための規定は,憲法とは本来相容れない内容なのです。 国家権力(内閣総理大臣,各大臣,,国会議員,高級官僚等)が最も基本的人権を侵害する危険性が高い(歴史上明らか)ので,これを戒めるためにこれらの者にあえて「憲法尊重擁護義務」(憲99条)を課しているのです。
 憲法は国家権力への命令書であって,国民に対する命令書ではないのです。 言い換えますと,憲法は国民のためにあるものであり,国家権力のためにあるのではないのです。

,日本国憲法の最大の特長−戦争放棄
 日本は先の大戦において,アジアの多くの市民に筆舌に尽くしがたい被害を与え,また,日本国民にも多大な犠牲を強いました。この深い反省のもとに成立したのが日本国憲法であり,戦争を放棄した憲法9条です。戦争や武力によって自国に有利に物事を解決するのではなく,平和に向けた様々な活動を積極的に行い(「一国平和主義」と揶揄されるいわれはない),戦争が起こらない世界を作っていこう,その先頭に立つことで,「国
際社会において名誉ある地位を占めたい」と誓っているのです。人類の長い歴史の中でようやくたどった帰結点であるとともに未来の世界に向けての出発点であり,ここに日本国憲法の先見性があります。日本はナンバーワンにならなくても,キラリ輝くオンリーワン(世界に一つだけの花)として,誰も攻めようとしない好かれる国になればいいと思います。そして,憲法9条により日本は戦後60年,好かれる国とまではいかずとも,誰
も攻めようとはしない国になってきたのではないでしょうか。この素晴らしい憲法の看板を降ろす必要は全くないと思いますし,降ろすことで,日本の安全が脅かされる危険性が高いのです。

,憲法「改正」論議の実態
 「改正」の対象として,環境権やプライバシー権などのいわゆる「新しい人権」と呼ばれていたものを憲法上の権利として明文化しようとの議論もなされています。しかし,これらの権利は憲法13条や憲法25条から導くことが可能であり,憲法改正ではなく,国会による法律の制定で保障は可能です。今まで環境問題に冷淡であり産業を優先してきた政府や与党筋から「環境権」を憲法に盛り込もうとすること自体,怪しさを感じます。
 憲法9条の「改正」と環境権等の明文化を一緒に提案して,どさくさに紛れて憲法9条を変えてしまおうとしているのではないかとの,監視の目を光らせる必要があります。

,憲法9条は,戦後60年間,私たちの安全を守ってくれました。
  世界に誇れる憲法9条を何としてでも,子どもたちに手渡したいものです。

斉藤道俊 2005/03/14



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