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「JR不採用問題の解決に向けてJR北海道は雇用を行うべき」
  − その後

このホームページのコラムの中で,2010年5月25日付で,「JR不採用問題の解決に向けてJR北海道は雇用を行うべき」−旧国鉄とJRとは一体のもの,との主張を掲載しました。  本年6月10日,民主党・社会民主党・国民新党が国土交通大臣に対して,JR北海道を含むJR7社へ183名,関連会社へ84名の雇用の要請をなすよう申し入れ,6月13日に国土交通省はJR各社へ要請をおこないました。しかし,JR北海道を含む7社は連名の文書で,それを断ってきました。JR北海道らのかかる対応は,最高裁での和解の精神・趣旨を根本から無視するものであり,誠に遺憾であります。JR北海道を含むJR各社においては,雇用問題に誠実に取り組まれるよう,重ねて要望するものであります。この度,鉄建公団訴訟弁護団において,加藤晋介主任代理人とともに中心的な役割を果たしてこられた萩尾健太弁護士から,下記文書が送られてきましたので,同弁護士の了解のもとに掲載することにしました。

斉藤道俊 2011/06/21


採用差別が確定した今こそJR雇用の実現を
−JR各社文書の問題と東弁会長声明の意義−

弁護士  萩尾 健太

1 最高裁で採用差別確定
 最高裁判所第3小法廷は、本年6月7日、1987年の国鉄分割・民営化の際に国労組合員がJR各社に採用されなかったことを巡る訴訟につき、組合差別があったことを認めて組合員への損害賠償を鉄道・運輸機構に命じた2009年3月25日の高裁判決の結論を支持する決定をしました。高裁判決自体、問題のあるものではありましたが、採用差別の事実が確定したことは重要です。

2 最高裁での和解
 国鉄の分割・民営化に伴うJR不採用問題は、その規模の大きさにおいても、また、24年間もの長きにわたって争われてきたという点においても、戦後最大の労働争議でした。それが、団結権と共に、被解雇者・家族の生存権をも脅かしてきたことからすれば、この問題はもはや、労働問題の域を超えて、人権・人道上の観点からも解決すべき問題といえます。
 この問題について、長期に亘った労働委員会審査と裁判を経て、昨年4月には政府と民主党・社会民主党・国民新党・公明党との間で政治解決に関する合意が成立しました。この合意は、不採用労働者に対する金銭補償とともに、雇用問題の解決として、政府がJRに対し200名ほどの採用を要請し、かつ、政府も雇用確保に努力することが内容となっています。これは、この問題の1日も早い解決に資するものとして、当時裁判に提訴していた6つの訴訟の被解雇者910世帯のうち、904世帯が政治合意に応じ、2010年6月28日に最高裁判所で和解をしました。
 前述した最高裁決定は、この和解に応じず、裁判を継続していた3名に対して出されたものです。

3 JR文書の問題点
 裁判上の和解によって、金銭は支払われましたが、それは、到底、24年の未払賃金には満たないものでした。その後、雇用の実現は進んでいませんでした。
 ようやく、本年6月10日、民主党・社会民主党・国民新党が国土交通大臣に対して、JRへ183名、関連会社へ84名の雇用の要請をなすよう申し入れ、6月13日に国土交通省はJR各社へ要請をおこないました。しかし、JR7社は連名の文書で、それを断ってきました。
 その理由として挙げられていたのは、1987年から90年まで広域採用や再就職あっせんを行ったのに、それを断った者が雇用されるというのは広域採用に応じた者との均衡を欠く、とか、JR各社は不当労働行為行政訴訟で採用責任がないと認められた、という点です。
 何を言っているのでしょうか。冒頭に書いた、最高裁決定で確定した採用差別の不当労働行為をなした国鉄の幹部が、その後JR各社の幹部となり、現在も社長などになっているのです。法人としてのJR各社に不当労働行為責任が認められなかったとしても、彼ら不当労働行為の実行犯が経営してきたJR各社に、被解雇者採用の社会的責任があることは明らかです。
 しかも、広域採用に応じた者のうち相当数の者が、現在は退職し、地元に戻ってきています。それと比べて、24年も解雇撤回のための闘争で困難な生活を強いられてきた者が、どうして得をしていると言えるのでしょうか。差別され、収入も断たれた困難な生活、中には離婚や家族離散、健康を害し、死去するなど、多大な困難を味わっています。1047名のうち、死去したものは69名に及びますが、その多くが壮年であり、死亡年齢の低さは、闘争生活の困難を物語っています。
 広域採用は、住み慣れた土地を離れて親族と引き離されるという困難を強いるものでした。その困難を味わった広域採用者は、むしろ、被解雇者らが広域採用に応じられなかったことを理解し、被解雇者らの闘いを支援し、政治合意を我がことのように喜んでいる者が少なくありませんでした。
JR各社の文書は、自らの責任を棚に上げ、事実をねじ曲げるものであって、許すことは出来ません。

4 東京弁護士会会長声明の意義
 6000人以上もの弁護士で構成される日本最大の単位弁護士会である東京弁護士会は、6月20日、「JR不採用問題の全面解決と政治合意の履行を求める会長声明」を発しました。JR各社には、その声明の以下の結論を是非受けとめて頂きたい。
「JR各社に対しては、政治解決が合意されたこと、及び、組合差別があったことを最高裁が認めたことの重さを考慮し、かつ人道的な観点から、採用に努力することを強く期待したい。」

以上


JR不採用問題の全面解決と政治合意の履行を求める会長声明

2011年06月20日
東京弁護士会 会長 竹之内 明

最高裁判所第3小法廷は、本年6月7日、1987年の国鉄分割・民営化の際に労働組合の組合員がJRに採用されなかったことを巡る訴訟につき、組合差別があったことを認めて組合員への損害賠償を鉄道・運輸機構に命じた原審の結論を支持する決定をした。 
国鉄の分割・民営化に伴うJR不採用問題は、その規模の大きさにおいても、また、24年間もの長きにわたって争われてきたという点においても、戦後最大の労働争議であるといえる。解雇された組合員とその家族がこの間に受けた苦しみは筆舌に尽くし難いものであったと思われ、この問題はもはや、労働問題の域を超えて、人権・人道上の観点からも解決すべき問題である。 
昨年4月には政府と民主党・社会民主党・国民新党・公明党との間で政治解決に関する合意が成立したが、これは、この問題の1日も早い解決に資するものとして高く評価できるものであった。この合意は、不採用労働者に対する金銭補償とともに、雇用問題の解決として、政府がJRに対し200名ほどの採用を要請し、かつ、政府も雇用確保に努力することが内容となっているが、その実現が進んでいるとはいえず、かかる事態は甚だ遺憾である。
JR各社に対しては、政治解決が合意されたこと、及び、組合差別があったことを最高裁が認めたことの重さを考慮し、かつ人道的な観点から、採用に努力することを強く期待したい。
また政府に対しても、組合員らの雇用を確保すべく、JR各社を積極的に指導しかつ必要な援助や措置を講じるよう要望するものである。



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