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やんばる(沖縄本島北部)視察報告

人権大会第1シンポ実行委員会のメンバー30名のうち,釧路の荒井剛弁護士と私を含む19名が参加して,4月22日から25日まで,やんばるの現地調査と沖縄県等の官庁調査を行なってきた。21日,22日の東京での委員会に続いての調査となり,計6泊の長旅となった。
23日は朝8時に那覇のホテルを出発し,辺野古の米海兵隊飛行場建設予定地である名護市の塩屋漁港で,大型バスからマイクロバスに乗り換え,北部三村に建設され,また,建設中の林道建設現場や,ダム建設現場を視察した。
やんばるは,ヤンバルクイナ(美しいが飛べない鳥),ノグチゲラ(アカゲラと近縁),ヤンバルテナガコガネ(体長6cmで日本最大の甲虫,カブトムシより大きい)等のやんばる固有種かつ絶滅危惧種が数多く生息している日本のガラパゴスと言われている地域である。
林道開発やダム建設(森林伐採による赤土の流出は沖縄の珊瑚礁も大きく傷つけている)がこれらの貴重な野生生物の生息域を減少させ,絶滅の危機に追い込んでいると考えられるが,地元ではヤンバルクイナの生息域の南限の北上とマングースの北上が一致する事を間接証拠として,マングース北上防止柵(道路には当然設置できないので,抜け穴有り)の設置工事に億単位のお金をかけている。これまでに捕獲したマングースの胃からヤンバルクイナの身体の一部が一切出てきていない(食べていない直接証拠と思われるが)のに,マングースが犯人とされていた。
「自然破壊という本質から目をそらせることになる,ヤンバルクイナだけを守っても意味はない。」との地元の「やんばるの自然を歩む会」の玉城会長の話に説得力を感じた。
ダムは沖縄の水瓶ですが,既に多くのダムがあり,地元の弁護士によると断水の回数も減っているし,沖縄の家屋には水タンクがあるので,大丈夫とのことであった。また,林業については,野生生物の生息地を根こそぎ奪う皆伐が行なわれていたが,機械化と製材用の上質な木が少ないために択伐はできないとのことであった。
そのために,林道も必要とのことであった。しかし,切った木の80%はおが粉として家畜の敷藁になってしまうとのことであり,自然保護のための貴重な木材の最後としては余りに哀れである。24日にお話を伺った本島最北端の国頭村(くにがみそん)森林組合の大嶺組合長(組合員の利益を守る気概を感じるなかなかの人物であった)は,ただ木を切るなといわれても,生活があり(組合員の平均年収は230万円程度),承服できない,とこれまた当然の話をしていたが,他方,きちんとした支払がなされるのであれば,保護地域にするための山林の売却や私権の制限にも応じる考えも示していた。貴重な生態系を保全するためには財政の裏付けのある国家的な取組が必要であると痛感した。無駄な林道建設やダム建設に掛ける多額のお金を使えば,保護地域の買収はもとより,コスタリカのようにやんばるの生態系の詳細なデータベース化(一つの産業です)もできると感じた。
調査の途中で登った玉辻山(標高289m)の頂上から見たやんばるの鬱蒼とした亜熱帯の常緑広葉樹林帯の眺めは,森の力で生きる活力を与えられているようななんとも言えない爽快感を感じさせてくれた。この生命の故郷とも言うべきやんばるの森がいつまでも健在であって欲しいと願わずにはいられなかった。
翌24日は,午前中に環境省所管の「やんばる野生生物保護センター」に行き,森林破壊がヤンバルクイナやノグチゲラ減少の最大の原因ではないかと質問したが,原因の一つであり,ヤンバルクイナについてはマングースも原因と考えているとのことであった。二人の職員が説明してくれたが,やんばるの貴重な生態系を守るんだという気概は全く感じられなかった。環境省にもっと予算と権限を与えなければ,日本はいつまでも開発途上国であり続けるのだろう。
午後から国頭村役場,国頭村森林組合に調査に行った。
夜は委員全員で那覇の「うりずん」という人気の店で沖縄料理を楽しみ,最後は皆でカチャーシーという踊りで懇親を深めた。
最終の25日は沖縄県庁を訪れ,午前中に沖縄県文化環境部自然保護課及び農林水産部森林緑地課,午後からは文化環境部環境政策課及び新石垣空港課からの聞き取り調査をした。
森林緑地課では,生活道路としては余りに狭い(幅員4m以下)林道を緊急の際の道路として必要とか交通量もあると説明していたが,現地を見た私たちにとってはあんなに曲がりくねった細い山道を行くくらいであれば海岸の道路と東西に通じている国道2号線を走ればいいと思ったし,対向車も後続車もほとんどいなかった林道を交通料があると言われても全くピンとこなかった。
環境政策課では,幅員4m以上かつ長さ2km以上の林道以外はアセスメント(環境影響評価の対象にならないので,チェックはしない,とのことであったが,北部地域の林道の総延長は240kmに達しており,まだまだ延長する計画がある。アセスの脱法行為と言っておかしくない状態だ。環境政策課の熱意のなさにがっかりした。
止まらない環境破壊と予算の無駄遣いに愕然とした調査であった。

斉藤道俊 2006/05/08



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