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教育基本法,再度,「改正」の理由はない

 教育基本法を「改正」する理由として,少年犯罪の増加,凶悪化があげられているが,そのような実態はない。少年による殺人事件のピークは1951年と61年で448件であり,最近10年間は100件前後である。しかるに,少年犯罪の増加,凶悪化という誤解がまかり通るのは,マスメディアによる報道の急増が主な原因である。かかる事実誤認のもとに,「改正」されていいはずがない。また,学力低下も「改正」の理由とされているが,教育基本法を変えることで全体の学力が上がるとは思えない。特に「愛国心」を植えつけることで,解決する問題ではない。教育基本法に責任はない。
 「愛国心」の強要,戦前戦後を通じて一貫して戦争責任を否定する靖国神社への首相の参拝,防衛庁の防衛省への変更,憲法9条の「改正」は,同じ根っこを持っている。すなわち,戦争をできる国にするための基盤作りである。
 数多くの尊い犠牲のもとに,私たちは,世界に誇るべき平和憲法と教育基本法を持つことができた。しかし,これが壊され,個人より国家に重きを置く国や戦争ができる国になってしまうと,私たちが得た自由や人権は間違いなく抑圧されるであろう。なぜ,国民の自由や人権を制限する法律を政府や国会議員が作ろうとするのか,よくよく考えてみるべきである。
 教育基本法は前文で「われらは,さきに日本国憲法を確定し,民主的で文化的な国家を建設して,世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は根本において教育の力にまつべきものである。」とし,続けて「われらは,個人の尊厳を重んじ,真理と平和を希求する人間の育成を期する・・・」としている。強い決意と高い倫理性を備えた感動的な前文である。教育基本法の目指すもの,すなわち,憲法の理想を実現していくことこそ肝要である。子どもに対して,すみやかに実現されるべきことは,憲法の理念を子どもにも保障している「子どもの権利条約」の中身であり,教育基本法の「改正」ではない。

 憲法も教育基本法も国民を縛るものではなく,国家権力を縛るための法である。ものごとについて自由に考え,他人の人権を侵害しない限り,自由に表現できる社会こそ,活力があり,進歩がある,いい社会だと思う。そういう自由で民主的な社会を実現したいものである。

以上

斉藤道俊 2006/11/10



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