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死刑制度に対する疑問

 昨年夏,「厳しい判決が凶悪事件抑止」という見出しで掲載された,「とにかく人を殺したら死刑が基本−を大切にしてほしい。」との投稿に対する,私の考えを述べたい。
 昨年12月26日,名古屋高裁が名張毒ぶどう酒事件で,同高裁の一昨年4月の再審開始決定を取消す決定をした。再審開始の理由は凶器とされた農薬が奥西死刑囚が自白した「ニッカリンT」ではない可能性が高いこと等であった。弁護団の懸命な調査で,現在は使用されていない「ニッカリンT」を探し出し,成分分析を行ったところ,「ニッカリンT」には必ず含まれる成分が毒ブドウ酒の飲み残りからは検出されないことが明らかになったからある。今回の再審開始取消決定は,「疑わしきは被告人の利益に」「一人の無辜(むこ−冤罪)も出さない」という刑事裁判の鉄則からみて,重大な疑問の残る決定である。昭和39年12月23日の1審津地裁判決も無罪判決であり,客観的な証拠からみて,被告人は無罪というより無実である可能性が高い事件である。「疑わしきは罰するという裁判」は誤りを犯す危険が大きい。
 「死刑廃止を推進する議員連盟会長」で警察出身の亀井静香衆院議員も,冤罪の危険性が常にあること,被疑者がうその供述をすることがしばしば見られることを指摘し,冤罪だった場合死刑は取り返しがつかないとしている。
 死刑は全ての国民に適用の可能性のある「制度」であり,冤罪の可能性という1点に限っても,重大な欠陥があると言わなければならない。
 また,犯罪,特に死刑判決に相当するような凶悪犯罪は,行為の結果の予測や損得勘定ができない状況になって犯されるものであり(中には自殺〔破滅〕願望の表れとしての犯罪もある),死刑を含む厳罰は犯罪抑止につながらない。このことは「先進国」で日本以外に死刑制度が残っているアメリカにおいて凶悪犯罪が増え続け,他方,死刑制度を廃止した欧州において凶悪犯罪が増加していないということからも証明されている。凶悪犯罪の抑止は,貧困や差別の除去等による温かい社会の実現と実のある生命尊重の教育(戦争は対極)によりもたらされるものである。
 犯罪被害者は十分な賠償を受けられないことが多い。遺族に対しては,事案に応じて,まずは,国が手厚い補償を行うべきである。そして,加害者に対しても死刑にはせず,刑務所での作業に対する賞与金から償いをさせることも考えられる。
 最後に,死刑も殺人にほかならず,歴代の法務大臣の幾人もが執行を躊躇している。実際に執行する刑務官も苦悩していることは想像に難くない。

 以上,様々な点から,死刑制度には問題があるのである。

以上

斉藤道俊 2007/01/18



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