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「国民投票法案」にNO!
 改憲のためになりふり構わぬ「希代の悪法」

 日本国憲法はその96条1項で,「この憲法の改正は,各議院の総議員の3分の2以上の賛成で,国会がこれを発議し,国民に提案してその承認を経なければならない。その承認には,特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において,その過半数の賛成を要する。」との規定を置いています。この規定の中の「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票」を国民投票といい,国民投票のあり方を決めるのが国民投票法です。
 国民投票法案の問題点は多岐にわたりますが,一言で言い当てるとしたら,「何がなんでも改憲のための手続法案」というべき「稀代の悪法」だということです。そもそも,主権者たる国民から憲法改正の声が上がっているのではなく(国民はそれどころではない問題をたくさん抱えている),憲法によってその権力行使を制限されている側から,現行憲法が不都合(邪魔)だとして,これを変えようとしていることに注意すべきです。紙幅の関係がありますので,2点のみ指摘します。
 まず,改憲しやすくするために,ハードルは設けないという点が致命的な欠陥です。すなわち,最低投票率が設けられていないということです。この点は与党案も民主党案も同じです。そして,有効投票の過半数で可決とされています。このため,投票率が40パーセントで,そのうち有効投票率が90パーセントとしますと,結局有権者のわずか18パーセントント超の賛成で,改正案が可決されてしまいます(40パーセント×90パーセント×50パーセント=18パーセント)。日本国憲法は前記96条の規定から改正の要件が厳格な硬性憲法であります。しかるに,国民投票法案は国民の2割弱の賛成で憲法改正案が可決されてしまうのです。多数決であっても基本的人権を侵害する法は効力を認められない,憲法は国家権力を縛るためにあるとする立憲主義の観点からみて,このようなハードルの低い(というか「ない」)国民投票の仕組みは認められません。
 次に,与党案では,改憲しやすくするために,改憲に反対の考えの人が比較的多いと思われる教育者,国家公務員,地方公務員約500万人の「地位を利用」した運動を禁止しています。これらの人は,「地位を利用」したとの意味が曖昧であることと相まって,処分の対象になるかもしれないということで,本来自由に行えることを自制してしまいます。これを萎縮効果といい,人権抑圧のための法律として効果抜群です。国民投票法案は,改憲前に既に人権侵害の先取りをしているのです。

 先の敗戦で得ることができた,かけがえのない平和憲法が改正(改悪)されてしまうことは,私たちの子孫のためにも,何としても阻止したいと考えています。

以上

斉藤道俊 2007/05/03



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