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「JR不採用問題の解決に向けてJR北海道は雇用を行うべき」
  − 旧国鉄とJRは一体のもの

 旧国鉄の分割・民営化に伴う国労組合員などのJRへの不採用問題は,23年もの長期間を要してようやく解決の合意がなされることとなった。
 1987年,分割・民営化に反対した国労などの組合員ら7628名がJRに採用されずに,旧国鉄清算事業団(分割・民営化にあたり旧国鉄の債務を処理し,余剰人員の再就職を進めるなどのために設立された特殊法人。以下「清算事業団」といいます。)に送られ,1990年,うち1047名が同事業団からも解雇された。国鉄の分割・民営化に対しては,地方(路線)の切り捨てを伴うとして全国的に反対の世論が多数であり,ここ帯広十勝においても同様であった。
 最高裁は2003年12月22日に,3対2という僅差でJRに使用者としての責任がないという不当判決を出した。JRに法的責任を認めた2人の裁判官(うち1名は裁判長)が」いたことは重要である。この最高裁判決は今日の鉄道運輸機構(清算事業団を承継した旧鉄道建設公団〔以下「鉄建公団」といいます〕をさらに承継した独立行政法人)訴訟等のよって立つ大前提となった。なぜなら,「仮に不当労働行為があった場合に,JRに法的責任がないとすれば,国鉄にある」と認めたからである。鉄道運輸機構は旧国鉄,清算事業団,鉄建公団を承継したものであり,不当労働行為があれば,責任を負うべき組織である。
 当時の政府は分割民営化により一人の職員も路頭に迷わせないと約束していた裏で,中曽根元総理は「国鉄民営化の目的はもっぱら,国労という労働組合潰し,総評崩壊のためにやった。」と明言している。政治家の嘘もここに極まれりというべき二枚舌である。
 帯広十勝の闘争団員も最初から参加している鉄道運輸機構訴訟の2005年9月15日の東京地裁判決も,2009年3月25日の東京高裁判決も所属組合による採用差別(不当労働行為)を明確に認めた。しかしながら,不当労働行為を認めながら,清算事業団からの解雇を有効とする矛盾した判断でもあった。裁判の場は最高裁に移された。
 そして,違法に奪われた雇用,否定された人権,踏みにじられた人格を取り戻そうとする長く苦しい闘争の到達点として,今回の解決に至った。
 解決案の内容は,和解金一人平均1,563万円は,路頭に迷わせておいた23年で割り返すと1年当たり68万円弱に過ぎず,決して満足できる救済案ではない。年金受給の回復もない。
 そのような不十分な解決案の中で政府はJR北海道,九州等の各社を中心に200名位の採用を要請している。JR北海道等はこれに真摯に取り組むべきである。JRと旧国鉄の同一性,一体性はJRが旧国鉄の人的(組合差別により採用されなかった職員以外の職員)・物的(駅舎,線路,車両等)財産を全て承継していることから,社会常識上,明らかである。最高裁の2名の裁判官もこの常識に従ってJRに法的責任ありと判断したのである。組合差別という人権侵害に筋を通して闘争することにより,多くの苦汁をなめてきた原告の方々を一人でも多く救済する責任がJR北海道等には厳然として存在している。

斉藤道俊 2010/05/25



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